産経新聞平成18年3月15日掲載 え〜美タミン NO.70
「♪ええ声バッタ♪は広島へ」

『できるかな』というNHK教育番組で、段ボールなどから何でも作っちゃう、私の幼いころのアートの神様TのっぽさんU。そんなのっぽさんが「♪とべとべぇ〜 羽を広げ〜♪」と、年老いたバッタになり踊っているではないか!?

それは《みんなのうた》で流れていた『グラスホッパー物語』。ロンドンのとある街角の公園で、初老のバッタTグラスホッパーUが孫たちを集め、以前自分が経験した公園の外の世界の話をし、外界の厳しさや人間の優しさを孫たちに伝えるという物語。のっぽさんは、作詞・脚本・歌・振付・主演と五役をこなし、みるものをミュージカルな世界へと誘ってくれるんです。

「けど、こんな素敵な映像・アニメーションを制作した人ってどんな人やろ・・・(ネットで検索)。伊藤有壱さん。四月九日まで広島市現代美術館にて『伊藤有壱アニメーション展 I・TOON CAFE』を開催中!?」。
というわけで一匹の♪ええ声バッタ♪は広島の比治山にある美術館へと飛びたっていくのであります。
伊藤さんは、ミントグリーンのイモ虫が主人公の、NHK教育テレビ『ニャッキ!』を手掛けていて、その舞台裏が覗けるとあって、子供たちがワンサワンサと押し寄せていました。

「子供のころから美術館に親しむ。ええこっちゃねぇ」と、♪ええ声バッタ♪は一匹ごとを言いながら奥の黒幕の中に入っていくと、伊藤有壱作のCMやMVを上映中。「♪キュキュッとおちてる♪っていう洗剤のCMに、平井堅や宇多田ヒカルとかのMVも伊藤作品なんやぁ」

先にいくと、撮影方法をみせるコーナーや写真パネル展示、それにパソコンでアニメ制作ができるブースなどがあり、伊藤ワールドを満喫できる展示になっている。そしてお目当てのモノは、一番最後にあった。絵コンテ・切株・衣装・・・、私は羽を休めた。「この切株でのっぽバッタが歌い踊り、孫たちに語ってたんやぁ・・・。あっ!」私は、この歌のテーマがT家族Uであるということに、ふと気が付いた。「よし、我が家へ戻ろう!」。♪ええ声バッタ♪はそう言い残し、東へ飛びたっていきました。

た。