産経新聞平成18年3月8日掲載 え〜美タミン NO.69
「健在! エノチュウパワー」
「来てくれたん、嬉しいなぁ。♪えぇー作品♪って言うてぇなぁ」と上機嫌で声をかけてきてくれたのは、エノチュウこと榎忠さん。その日のKPOキリンプラザ大阪『その男・榎忠』(四月十六日まで)のオープニングには、この展覧会を企画したヤノベケンジさんや、森村泰昌、椿昇、藤本由紀夫、澤田知子さんなど、関西の人気作家がズラ〜リ。「いやぁーどうも!」というエノチュウさんの挨拶に会場は大爆笑。

私がエノチュウさんと出会ったのは三年前のSUMISOのアートフェア。「わし、エノチュウ言うねん。今から大砲鳴らすから見ててや」と声をかけてきてくれたんです。開催を知らせる縁起モンの大砲。「ドカーン!」
まさにド肝を抜くパフォーマンス。他にも、一九七○年に白いふんどし姿に万博マークで銀座を歩き、十分で警察に捕まったり、一九七七年に半刈りでハンガリーに行き四年間も半刈り(頭・髭)で常勤の工場で仕事を続けたり、一九七九年には空手の修行中!?に「その人は自分の中にいる」といい、上半身裸のエノチュウから金髪に紫のドレス姿のローズチュウが誕生したり…。

そして一九八一年、ポートピア博で、上が船、下が機関車でできている『スペースロブスター P-81』 を発表したり、時代の流れで不要になった機械部品で作る『MACHINE TOWER』を現在も制作中だったり…。

つまり前半は、内から出てくるニトロ級のエノチュウパワー。後半は、そのパワーで廃鉄に息吹を吹き込むエノチュウマジック。いわば、゛者から物″ へと移り変わっていった『激動の昭和』の、゛進歩と恥部″を象徴している作品なんです。

「伝説でしか知らなかったので、見たかったんです。ハッキリ言って嫉妬してます」と、平成の鋼鉄師ヤノベさんにそう言わしめたエノチュウさんの新作は、廃材機械部品を立ち並べ、未来都市を表現した『RPM・1200』。体を刺す緊張感と、ウォーンとくる重圧感。「これは創造の予言か…」。奇抜で面白くてカッコえぇ、この展覧会。エノチュウさん、最後に言わせてもらいますわぁ。
「♪えぇーさくひぃーん♪」