産経新聞平成18年2月22日掲載 え〜美タミン NO.67
「80年ぶりに甦った影絵アニメ」
「雨かぁ・・・、映画どうしようかなぁ」。朝十時十分のみの上映で、残りあと三回。「なんせ約八十年ぶりの上映やから、観とかんとまた八十年後の上映!てなことになったらオレは・・・百二十四歳!?」ってことにはならないと思いますが、私は降りしきる雨の中、梅田ガーデンシネマへと向かうのでありました。
この日二月一日は、大人が千円で観られる《映画の日》。館内に入ると、満席状態。横の席の女性が「これ観たら、次はなに観る?」と作戦会議。「あぁ、美術館も、文化の日だけやなくて、入館料が割引になるT美術の日Uていうのが年に何回かあったらいいのになぁ・・・」。そんなことを考えているうちに、魅惑の影絵アニメーション『ロッテ・ライニガーの世界』の上映は始まった。
上映作品は、短編三本と長編が一本。まずは『カルメン』。ビゼーの歌劇「カルメン」をモチーフにした音楽劇。騙された騎竜兵とカルメンの、闘牛場での一騎打ちは見物! がしかし、カルメンの不思議な魅力に、闘牛士と牛が・・・!? 九分の短編なんですが、ミュージカルのように華麗で、カルメンが身にまとっているレースが綺麗!
お次は、モーツァルトの「魔笛」を題材にした『パパゲーノ』。森の風景と恋物語が観る者を魅了し、生き生きとした鳥の羽ばたきが奥行きを感じさせる。三作目は、スッペの「美しきガラテア」より『ガラテア』。王が、理想の女性彫像TガラテアUを制作し、思わずキスをするとそれが人間になるという、大変羨ましいお話。背景が丁寧に描かれているし、それにキスシーンが横顔の影なので、実にT純美U。
そして最後は、完全修復サウンド版での世界初上映『アクメッド王子の冒険』。物語は、《アラビアンナイト》をベースにした冒険活劇。展開が二転三転して、ハラハラドキドキの連続。それに、アニメーションの遺産ともいうべき手法が続々登場! 背景は、赤・黄・青・緑・橙で彩られ、その幻想美は、影絵だからこそ生み出される陰陽世界。「三月、京都で上映するからまたいこ!」。あぁ、こりゃ当分この影を追ってしまいそうですわぁ〜。