産経新聞平成18年2月1日掲載 え〜美タミン NO.64
「福岡で二つの灯りを満喫」
福岡に行って来ました。
さて、お目当ては?・・・「こってりラーメン!あったかいもつ鍋!隠れた名物、鶏の水炊き!」って、食いモンばっかりかぇー!!
実は、福岡県立美術館で開催された『没後三十年《高島野十郎展》』に行って来たんです。野十郎は、一八九〇年福岡県久留米市に生まれ、生涯T孤高Uを貫き通した信念の画家。館内は来館者でいっぱい。地元の方々に愛されているんですねぇ。
《写実》・・・とにかく凄い!赤い絵柄の皿から「ガシャーン」という音まで聞こえてきそうな『割れた皿』(昭和三十三年ごろ)。「水の流れが止まり、岸辺の岩や巖が動き始めたのを見た」と野十郎が語った、『流』(昭和三十二年ごろ)。皿からは、持つと手が切れそうなT危U。清流からは、巖がこちらにムクムクと迫ってきそうなT在U。私は、T写実というのはリアルさだけではなく、肌に迫りくる幻想のようなものが存在するUということを、この絵から学びました。
《欧州》・・・昭和四年から八年まで主にパリに滞在し、作風が初期のT陰Uから解放感あふれるT陽Uへと一変している。その中でも『梨の花』は、中央からムワァ〜ッと広がる描き方、あの〜つまり・・・ゴッホですわ!やっぱり、名作の真意はその地で描いてみないとわからんし、名産はその地の空気と一緒に食わんと味はわからんし。だから、とんこつは福岡で食わんとわからんていう・・・ えっ!? 話の流れが違うって?? もとい! そして、野十郎が生涯描き続けたのがこれ。
《蝋燭》・・・薄暗い会場には、一作に一本、計十一作の蝋燭が展示してある。長さや、炎の色とか揺れ方が微妙に違うんですが、ここで謎がひとつあるんです。見ていると、そこから離れたくなくなる程魅了される絵なのに、何故か個展では発表されず、知人にプレゼントしていたようです。その理由は、野十郎のみぞ知る真実。「絶対に謎を解いてみせるぞ。よし、蝋燭の灯りを知るには、まず灯りからや!」と美術館を出た私は、屋台の赤ちょうちんへと向かうのであった。