産経新聞平成17年12月21日掲載 え〜美タミン NO.58

「美大で特別講師をやりました」

先日、作家の小枝繁昭さんから、京都精華大学の特別講師をお願いできませんか?と依頼があり、行ってきました。
小枝さんの車でキャンパスに到着したのは、一時半過ぎ。やっぱり美術系の大学ですね。外で学生が彫刻なんか彫ってたりするんです。「うわぁ〜」って私は完璧オノボリさん気分。
二階にある講師室で、軽く打ち合わせ。「生徒は二年生なんですが、少しずつ絵のことが分かりだしてきて、のびる・のびないがみえてくる学年なんです。だから学生の将来のためにも、けんたさんなりの買い手の切り口でお話ねがえませんでしょうか?」。うわぁ、こりゃ責任重大だぁー。

そして二時過ぎ、講義スタート。私が喋っている間、この「え〜♪美タミン」の記事に目を通してもらったり、「コレクションが、版画から現代美術に移行した真意は?」という鋭い質問が飛び出したりと、なかなか濃いぃ〜二時間半。

特別授業終了後、「終わったぁ。さぁ帰ろっ!」と私が講義室に戻ろうとすると、「私の作品見ていただけませんか?」とたくさんの学生が声をかけてきた。
何か審査員になった気分。見てみると静物に抽象画、それに心象画などがあり、みんな芽が出たての球根のように初々しい。

そして、ある学生が見せてくれたのは、細かい穴をあけたアクリル板を油彩画に被せた作品。「梨やメロンなどで異空間を表現してみました」と学生が私に説明してくれた。それぞれに、モノの質感がでてて実にうまい。けど、どうもその"異空間"が伝わってこない。そこで私は机にグラスを置き、「グラスを見ながらゆっくりしゃがんでいって、ハッ!としたところで視線を止めてください。そこに貴方の言うところの異空間があるはずです」。
これは、買い手としての立体の楽しみ方。描く前に"よくモノを見る"ということに、彼女は気付いてくれたようです。

この日、私に声をかけてきてくれたのは、なんと全員女性。皆個性的で、前へ!前へ!というのがヒシヒシと伝わってくる。男性学生諸君、頑張ろうやっ!そして再会しましょう、個展会場で!