京都市中京区にあるギャラリーアールで『ぼくのたからもの TRIBAL ART(部族芸術)N.T. コレクション』が開催された。
これは、コレクター歴二十数年の利岡誠夫さん(七十九歳)のコレクション展。「けど、現代美術コレクターやのになんでトライバルアート??」、と疑問を抱きながら、いざ京都へ。烏丸通りの角を曲がると、利岡さんが笑顔でお出迎えしてくれた。ギャラリーアールは、町屋づくりで趣きのあるギャラリー。利岡さんの案内でまず二階へ上がってみると、体に巻くクバ大国の布『プショング族アップリケ・ラフィア』が目に飛込んできた。「チリダ(スペインの彫刻家)みたいだ!と思い、買いました」・・・確かに、石器時代の道具のような模様でチリダみたい。
その左には、上に奈良美智のドローイング(人物)、下には二千年前の漢俑(立像)が展示してあり、じぃーっと見ていると人物が過去から現在へシンクロしてくる。階段横の『タイ・モン族襟飾り』と、村上隆の金箔を張った作品『Rosa』なんかは、タイと日本の美が見事に展示されている。一階に下り、「これクレーや!と思い買ったんです」と説明してくれたのは、双頭の蛇が描かれている『ペルー描き染め裂』。
「ピカソや現代美術の作家は、こういう部族芸術に影響を受けてるんです。だから逆に『クレーみたいや!』と面白がって部族芸術品を買い、それを皆さんに見てもらい、面白がってもらうのが一番楽しいんです」。五十五歳まで、"美術品は買うものではなく観るもの"と確信していた利岡さん。その観念を打ち破ったのが、アフリカの彫刻。「もう一目見て面白い!と思い買いました」。あっそうか!長年、現代美術が好きでずぅーっと観てきたからこそ、美術の原点に心引かれ、そして現代美術作品を買うようになったんや!
来年、京都造形芸術大学の学生が、二百五十点もの利岡コレクションから作品をチョイスし、企画展を開催する予定だそうだ。利岡さん、いつまでもお元気で。