産経新聞平成17年10月19日掲載 え〜美タミン NO.50

「ムットーニの「迷宮」へ行く」

十月一日、名古屋のラジオにゲスト出演する本番前。「どっか近場で、面白そうな展覧会やってへんかなぁ」と情報誌をめくっていると、「あっ、パルコで"ムットーニ"やってる。こら行かな!」。というわけで本番終了後、『自動人形師ムットーニの機械仕掛けの迷宮博物館<ムットーニ ミュージアム>』へと向かった。
"ムットーニ"こと武藤政彦さん(一九五六生まれ)の作品は、音楽や語りに合わせて人形・セット・照明が動く、シアタードラマボックス。まずエントランスで迎えてくれたのは、かえる使いやアンドロイドの立体オルゴール。

「序幕からググッとくるなぁ」そこを抜けると、通路が左右に分かれている。「どっち行こかなぁ〜」と思案していると、右の奥の方からJAZZが!?
行ってみると、縦長のボックスの中でビッグバンドが揺れ、歌姫がスイングしていた!<トップ・オブ・キャバレー>(一九九七年)。「カッチョええなぁ。・・・あぁ、間奏のトランペットソロやなぁ。あら、ミラーボールが回りだした!うわっ、ステージでダンサー達が踊ってる!!」あっという間のショータイム。

余韻を引きずりながらその場を離れると、今度は神聖な音色が!?
導かれるようにたどり着いたのは、きらびやかなパイプオルガンの前。奏でる牧師の奥から、やがて女神様が出現する。「音が賛美歌にかわった。・・・あっ、女神様が昇ってゆく。おぉー、翼を広げてさらに上へ・・・うわぁー、天から一筋の光が!」。

私は、カンターテ・ドミノ>(二〇〇三年)の明かりが消えていても、暫く立ち尽くしてうた。「あぁ、次行かんと・・・」。もうこうなったら、「ボォーン」と鳴ればあっち。「コツッ、コツッ」と聞こえればそっち。
最後は、萩原朔太郎の名作を語り調にした、ミステリアスな<猫町>(二〇〇四年)を堪能し、出口へ。
するとムットーニ本人がいるではないか!

「来年二月、梅田阪急百貨店でやりますよ」。えっ、大阪でまた見れるの?
いやはや、当分迷宮から抜け出せそうにありませんわぁ。