産経新聞平成17年9月7日掲載 え〜美タミン NO.44

「光と色彩のハーモニー」

ある夏の日に降り立った、JR山崎駅。

「目的地まで徒歩十分かぁ・・・。んっ!?送迎バスが出てる。ま、せっかくやし、ボチボチ歩いていこっ!」。少し行くと、目的地の看板があり「あっ、もうすぐだ」と小走り近付いてみると・・・「あらっ、上り坂? しかも矢印はまだ遥か向こうに・・・」と思っていたその時です。目の前を軽快に送迎バスがビューーン!!

「ミスった、いや、運動や運動!」と叫んだ私は、ひょっとして負けず嫌い??
そして、木陰道〜トンネル〜レストハウスを抜けると、自然と庭園の静寂空間『アサヒビール大山崎山荘美術館』に到着。

そう、私はクロード・モネ(一八四〇 - 一九二六)の『睡蓮』に会いにきたんです。イギリスのチューダー様式風の館内へ入ると、濱田庄司などの陶器コレクションが出迎えてくれる。
右に行くと、安藤忠雄設計の新館"地中の宝石箱"。

コツコツと足音が響くコンクリートの階段を下りていくと、そこは円形の展示室。ピエール・ボナールの『開いた窓辺の静物』や、モネに感銘を受け画家になったポール・シャニックの『ヴェネツィア』など、水辺をテーマにした作品が展示してある。

そして奥に差し掛かった時、"四枚の睡蓮"は水面を滑るように私の目の前に現れた。池に浮かぶ花、映りこむ木陰や雲。それらを椅子に腰掛け鑑賞していると、自然と汗がひいてくる。あぁ、癒されるなぁ・・・、と薄目を開けていると、んっ、何やこれ!? 浮いてる。本当に水面に睡蓮が浮いてる。あっ、雲も流れてる!、と四枚の『睡蓮』をみて、驚嘆していたその時です。一番左の『睡蓮』(一九〇七)に、天から一筋の光が!
「あぁー、自然光によって色彩がより透明感を増し、パリ・ジヴェールニーの邸宅の空気感がヒシヒシと伝わってくる。これがモネが愛してやまなかった睡蓮か!」

その後、館内外の睡蓮の池でホッと一息。「うん、秋にまた来よっ!」と固く誓った、帰りの送迎バス車内でした。「あぁ、涼しっ!」