赤は『売約済み』、青は『思案中』。
これって何だかわかります?
実はこれ、画廊のプライスシートに貼ってあるシールの色。
けど最近、シールだらけの展覧会ってないなぁ・・・。
いや、それがあったんです!
大阪の児玉画廊で開催されていた『伊藤存展』。
私が行ったのは三日目。
この時点で一部屋の十三点中の十点が赤、三点が青という凄い売れ行き!!
この人気の秘密、気になります?
実は存君、『描く』のではなく『縫う』んです。
そのかすれた感じの糸のラインからは、男の子の遊び心と
緻密に計算された"動き"が伝わってくるんです。
存君の作品の楽しみ方っていろいろあって、たとえば『タイガーコネクション』。
タイトルにタイガーと書かれている以上、どこかにトラが描かれている筈。
けどそれを探すのが一苦労。糸林の中から「あっ、いた!」なんて見付けても、
「実はもう一匹いるんですよ」なんて言われたら、思わず「ガァォー」と吠えたくなる。
そう言えば、二〇〇三年ワタリウム美術館(東京)での『きんじょのはて』展の時、
展示作品や会場の片隅などに生息する!?小さな作品を見付けて楽しむ、存君ナビの
『ウラ展覧会ツアー』というのがあった。
今から考えると、館全体を作品にしてたんやなぁ・・・。
そんなことを思いながら、次の部屋へ移動。
すると、床に紙を使った作品が展示してある!?
よく見ると、薄茶色の紙を手でちぎって枯れた沼地を表現し、
大蛇が雌鹿を飲み込んだ姿を白い紙で化石にしている。
あっ、思い出した。以前に「僕、あばらとかの骨の感じが好きなんですよ」って言ってたわ!
また、シーラカンスまで完璧で、芸が細かい。
さらに奥の部屋に行ってみると、習作ドローイングを何と初公開!
『描く』から『縫う』。
そのスリリングな関係は、まるで数奇な運命の糸に操られているかのよう。
・・・凄い!
『売れる』というより『熟れる』。そのことを強く感じた今回の展覧会。
存君は、これからも私の中でずっと"在り"続けることでしょう。