産経新聞平成17年7月6日掲載 え〜美タミン NO.36
「学芸員といわしの群れ」
仕事先での楽しみは、美術館巡り。
「明日、広島で仕事か〜。広島市現代美術館は今なにやってんねやろ?」
ネットで調べてみると、「ベラルドコレクション 流行するポップ・アート」が開催中!
「明日、イベントないんかな〜あっ、ある!」。
というわけで、美術館学芸員によるギャラリートークを体験することにした。
二時過ぎに到着すると、トークはもう始まっていた。
シュッとした女性学芸員を囲み、爽やかな学生風カップル、PTA会長風のオバさま、
ジャコメッティの彫刻のようなおじいちゃん他が、いわしの大群のように進み、作品を鑑賞している。
冒頭に展示してあるポップ・アートの覇者ウォーホルについてのトークは聞き逃したが、
それ以降"いわし入り"させてもらった。
≪学芸員≫
「こちらはロイ・リクテンスタインの『鏡』(一九七一年)という作品です。
これは漫画の鏡のイメージを絵にした作品です。」。
大量に生産・消費される身近なモノを題材にして、
豊かな生活を表現したのがアメリカのポップ・アートかあ〜、
とそんなことを思いながらアメリカからヨーロッパの展示室へ。
≪学芸員≫
「ポップ・アートが誕生したのは一九五〇年代のイギリスで、アメリカと違いフェティッシュな色使いが特徴です。」。
確かに抑え気味やなぁ。で、フェティッシュて何??
≪学芸員≫
「ヨーロッパは、大量消費社会に対しての批判的な作品が多く見受けられます。」。
アメリカは象徴的やもんなあ〜。
≪学芸員≫
「これはゴミを固めて作品にした、アルマンの『凍りついた文明NO2』(一九七一)です。」。
・・・そぉーか、量産され消費されたモノは、やがてゴミとなって溢れ出すという意味か!
この缶飲料なんて、代表的なモンやもんなぁ〜。
≪学芸員≫
「最後に何は質問はありませんか?」
≪参加者≫
「・・・シーン」。
無言の遠足、無事終了。
あ〜、ポップ・アートの流れが見えてよかった。学芸員さんありがとう!
と感謝し、一匹のいわしは笑いの海へと戻っていった。