産経新聞平成17年4月27日掲載 え〜美タミン NO.27
「骨董品よりいいモノ見つけた」
『骨董品屋さん』。売り手と買い手の目利きがものをいう世界。ある日、知人のリキューさんから「親父の骨董品屋『魯風人』にオモロイのが入ったんで見に行きませんか?」と電話があり、行ってみることに。店内は、まさに宝の山。
「これ見てください」とおやっさんが見せてくれたのは、三十文字位の書の掛け軸。「これ、中川一政が中国へ行き来してた頃に書かれた書ですわぁ」。確かに、中国を匂わすような漢字が多々見受けられる。
「で、この作品のオモロイところはここなんです」。んっ?何?「ほらっ、最後に漢字一文字を右横に付け足してるでしょ?」。うん、一文字横に飛び出している。「書いた後に気が付いたんでしょうねぇ、偽もんやったらこんな書き方しないでしょう」。おっしゃるとおり、偽物ならきちんと書かれている筈。これは珍品発見!
「次はこっち見て下さい」・・・何?「これは鉄斎の作品です」。それは山々に囲まれた川辺で、釣り人が楽しそうに踊っている絵。そこからは、静穏な風景と釣り人の逸楽感が、ヒシヒシと伝わってくる。・・・偽物ではこの風情は出せない・・・いい仕事してますねぇ〜、と一人鑑定団をしていると、奥の方からおやっさんの声が聞こえてきた。
「え〜右側に松があり、左ちょい下には今にも飛び立ちそうな鶴、手前には雑草が生い茂っていて、色は濃い緑・・・」。んっ、えらい丁寧に説明しはるなぁ〜と奥へ行ってみると、おやっさんが目の不自由なお客さんに、絵の説明をしていた。
「この方、いいモン入りましたよって連絡したら飛んできてくれるんです」。そしたら、そのお客さんが、「知り合いが『この掛け軸の花、きれいですねぇ』って言うと私が『光沢のある赤がなんともいえないでしょぉ〜』って答えて上げるんです」。
私はこの時、作品の真贋が云々というより、二人の関係『真』、つまりホンマもんであるということに気が付いた。おやっさん、心までえぇ〜顔してるわぁ〜。また寄ります。おおきにっ!