産経新聞平成17年3月2日掲載 え〜美タミン NO.19

「芸術漫画?はまった!」
『ギャラリーフェイク』『オークションハウス』『ゼロ』、これ、何だかわかります?
実は三つともアートを題材にした漫画。
「なぁ〜んだ、漫画かぁ〜」と、侮るなかれ!凄いんです。
この中で私が一番ハマっているのが、原作・愛英史、漫画・里見桂の『ゼロ』。

ゼロとは、本物を生み出す贋作者で、自称"神の手を持つ男"。
彼は世界各国の富豪から、あらゆる芸術品の再生や謎解きの依頼を受け、
それを解決すると要求した報酬を受け取る。

私と『ゼロ』との出会いは、元映画会社の宣伝部にいた佐藤さんの一言から始まった。
「けんたさん『ゼロ』は絶対ハマリますよ。あらゆるジャンルに絡んできますから!」。
…あらゆるジャンル!?あぁー読みたい!!次の日、早速本屋さんへ。

「ゼロ…ゼロ…あった!うわっ、めっちゃ男前やし、かなりクールそうやなぁ」。
そして目次を見てみると、
『二枚あったモナ・リザ』『竹久夢二』『幻の名茶器「夕霧」』
『ガウディのサグラダ・ファミリア』『ノアの箱舟大洪水の真実』
『ベートーベン・幻のピアノ』『新・オリエント急行殺人事件』…、もうタイトルだけでTKO寸前。

まず驚かされるのは、ひとつの題材に対しての徹底的な分析。
吹き出しなんか二十行は当たり前!
では例をひとつ。『世紀末の天才エゴンシーレ』。 映画監督ポール・アレックスは、シーレの映画を制作。
この中のワンシーンに、裸体のシーレが女性の首を絞めるシーンがあり、これが話題に。
このシーン、以前に監督がプラハの露天商で見掛けたシーレの絵 「完全なる愛」を題材にして撮影が行われた。
何とその絵が、パリのドナルド教授から、ミュンヘン美術館へ売却されたという。
実はこの「完全なる愛」は、監督が映画の話題作りの為にでっち上げた真っ赤な嘘。
この嘘から出た嘘を、ゼロが暴いてゆく。
その贋作を暴く切札は、手紙に書かれたシーレの癖にあった!

感涙と感動の芸術ロマン『ゼロ』。
手の汗を拭うハンカチを用意してご覧あれ。