産経新聞平成17年1月19日掲載 え〜美タミン NO.14

「最終日」はやめられない」

「まだ見に行ける!」。そう油断していると、気が付けば最終日!?ってことありませんか?
昨日の暮れ、ノマル・プロジェクトスペースキューブ&ロフトで開催された
「Jahresgaben」(ドイツ語で”一年の贈り物”)という作家三十人の企画展に、
愛好家仲間の大村さんと足を運んだのは最終日。

ギャラリーに到着し、入り口右側の展示室を覗くと、
パーティーなどでよく使われるアルミのお皿が、低い台上に逆さまに展示してある??
「何やろこれ・・・」と心の中で呟きながらしゃがんでみると...えっ!?

透明やん!大西伸明は、アクリル樹脂で人間の固定観念に問いかける作品を表現していた。

工房をぬけて階段を上がり、ロフト風になったスペースを覗いてみると、
ライトBOX上に白い指紋が浮かび上がった、プラスチック台付きのセロテープがあるではないか!
これは指紋採取キットを作品にした、大崎のぶゆきの作品。
キットを購入すると、自宅で火曜サスペンス劇場ごっこができるという代物。
けど一番ひかれるのは、その証拠品の生の質感である。緊張感があり、実にアートしている。
日用品から証拠品へ...。皆さんもトレンチコートの襟を立て、粉にまみれてみませんか?
そうこうしていると、またあることに気が付いた。

京都の細見美術館での「若沖と琳派ーきらめく日本の美」も明日が最終日だ。
どうする?気が付けば、大村さんと京阪電車の特急にいた。
そして、細見美術館でチケットを買おうとしたそのときです。
「見られるならこの招待券を二枚差し上げますよ」。
素晴らしい!!これだから最終日近辺の来場はやめられない。
伊藤若沖は、何年間も筆を持つことなく鶏を見続けた。
そして書かれた鶏は今にも飛びかかりそうな躍動感に溢れ、
色褪せることのない色調は三百年もの歳月を超越し、
日本の美の真髄を私達に語りかけてくれた。
あ〜、優美な鶏に出合えてよかった。ニ〇〇五年の酉年もいいことがありそうだ...と、深夜にスーパーでかしわを買って帰宅した聖夜でした。