産経新聞平成17年1月12日掲載 え〜美タミン NO.13

「二人の神様が叫ぶ」

「緑」、これはアート作品にも言えること。
「あ〜、あの時買っといたらよかったぁ〜」と思う作家がいる。
少女が天を仰ぐ姿に心揺さぶられたり、はたまたナイフを持ち、こっちをにらんでいる姿にドキッとしたり...。
奈良美智(一九五九年生まれ)は、そんな屈託のない作品を、発表し続けている。

あれは六年前、仕事の合間に覗いたマイドーム大阪でのアートフェア。
足早にブースを回っていると、ふと目に飛び込んできた作品が・・・。奈良美智だ。
最近美術雑誌でよく目にする奈良のキャンバス作品がここに・・・。

この当時はまだ値段も手頃で、喉から手が出る程欲しかったが、何故かこの時は敬遠した。
それから一年後、心斎橋パルコで買い物をしてたら、
なんと奈良美智のドローイングが、こらまたお求めやすいお値段で販売しているではないか!
「これは買いだぞ、けんた!」と”愛好家の神様”が私に降りてきて囁いた。
そして次の瞬間「おいおい、今日は衣装を買いにきたんだろう?」と”笑いの神様”が急降下し、私をなだめだした。
結局、衣装を買い、また奈良作品をGETできなかった。

よぉーし!と必死になればなる程、アクリル作品・時計・限定Tシャツ、すべてが売り切れオンパレード。
「あ〜、縁がないんかなぁ」と諦めかけていたその時、大阪市内のギャラリーから郵便でカタログが...。
そのリストに、奈良の浮世絵とのコラボレーション作品で、
カラーゼロックスペーパー十六枚セット・Edition(限定)五○の「in the floating world 1999」が販売されているではないか!
「これを逃すなけんた!」という愛好家の神様の絶叫にも似た声を聞き、ついにGET!!
そんな奈良が今、大阪・中之島のgraf media gmで「奈良美智展 Shallow Puddles」を開催している。
オープニングのスライドショーでは「まだ見たい?」と奈良が問いかけると「見たぁ〜い!」と皆が大合唱。
会場が温かい優しさに満ち溢れ、アートの神様もニコッと微笑んでいた。

さぁ、元気ない時はあったまりにいこっ、奈良美智に。