産経新聞平成16年12月8日掲載 え〜美タミン NO.9

「ドアの向こうに吸い込まれ」

三年前、大阪のノマルプロジェクトキューブ&ロフというギャラリーから
「ぜひ一度いらしてください」とお手紙をいただき、訪ねてみることに。
どんな出会いがあるのだろうとドアを開けた瞬間、アートドラマは開演する。
そんなギャラリーのワンシーンに、名和晃平の作品はあった。
動物や果物をビーズで覆った不思議な作品。見つめていると、現実と非現実の狭間に迷い込みそうだ。
あぁ〜吸い込まれてゆくぅ〜。
その夜、作品が気になって眠れない。

くそぉー、こうなったら、ビーズの羊が一匹、羊が二匹...どうも名和マジックにかかったようだ。
そして数日後、大阪港にあるギャラリーCASOでのアートフェアで何かキラッと光る作品が!?
あっ、名和晃平の作品だ!と心の中で叫んだその時です。
ギャラリーの方が私に「けんたさん、紹介します。名和晃平です」。
うん、好青年だ!私はそのシュッとした姿に、また吸い込まれてゆくぅ〜。
それから、彼の作品をあちこちで目にするようになった。
プリズムボックスの中に動物や武器を入れ、角度により現れては消え、
はたまた二つになったりと、幻想的な距離感を表現している作品。
それらの作品に、赤ピンが付いているのを見る度に(売約済みの印)
嬉しくなってしまう。そして先月、ノマルプロジェクトキューブ&ロフで二年ぶりの個展が開催された。

会場に一歩足を踏み入れると、そこには「BIG BANG(ビッグバン)」や
「創世記」を思わせるような立体作品から内に迫ってくるドローイングまで、
時感と距離感を超越した名和の小宇宙が存在していた。
凄い...。そして打ち上げの席で彼と久々の再会。

東京からギャラリスト、作家、ライターなどが集い、名和が来年、ニューヨークに行く話などで盛り上がった。
そんな名和が、三次会のカラオケボックスで披露してくれたのが、
ボブ・ディランの「風に吹かれて」。
すると私の中で、カラオケボックスがプリズムボックスに変わった・・・。
彼が追い風に吹かれている証かもしれない。あぁ追い風さ〜ん、私にも吹いてきてぇー!