産経新聞平成16年11月17日掲載 え〜美タミン NO.6

「先輩がくれたウォーホル」

三年前、大阪市内のアートフェア会場で五十代の紳士風の男性が近づいてきた。
「森村泰昌さんの作品お好きなんですよね?」むムッ!何者!?「私も愛好家なんで、ご一緒しませんか?」
わぁーい!こりぁ〜話が弾みそう。

「で、ずぅーっとウォーホルのサイン入りのキャンベルスープ缶を見てはりますけど気に入ってはるんですか?」。
図星だ、ウォーホルは持ってないので欲しいなぁと思っていた矢先...。「よかったら、私がプレゼントしますよ」
えっ、うそ!?作品をいただけるなんて・・・。その日は、この大村さんのコレクション談などを聞きながら、
楽しくブースを回りました。

それから一年後、難波のキリンプラザで行われた森村泰昌展のレセプションパーティーでのこと。
「あっ、けんたさん、例のモノ持ってきましたよ」・・・この方は確か大村さん、で、何を持ってきたんやろう・・・。
「これ、ウォーホルの小品です」。あっ、思い出した!プレゼントするって言うてはったなぁ〜...けど何で私にくれるんやろう・・・。

謎のまま帰宅し、ウォーホルを飾りました。
会社員でもある大村さんのコレクター歴は約十五年。好きな作品に囲まれて暮らすことが何よりも楽しみだという。
大村さんは、作品を贈与することにより、愛好家が愛好家を育てていき、そして次の世代へと伝えてゆく。
大村さんはそれがアートにとって一番大切なことだと教えてくれたんだ。
そして、「育」と「伝」が、より感性を磨かせてくれるんだ!

その日以来、大村さんとよくギャラリー回りをさせていただいてます。
やはり、どの分野にも先輩というのは必要なんだなぁということを、アートが教えてくれました。

大村さん、そしてウォーホル様、ありがとう。